灘高校 53年ぶり夏2勝

灘高校を知らない人と、PL学園を知らない人はどちらが多いだろう。そんな西日本最強の進学校である灘高校の野球部が、今年の高校野球兵庫県予選で2勝したらしい。
我が母校淳心学院灘高校は毎年定期戦のようなものを行っていて、灘高校のグラウンドにも行ったことがあるのだが、これがまた狭い。レフトは60mほどしかないんじゃないか。バックネットの下部は板張りで、風情はあるが学校が力を入れているという印象は全く受けないところである。
例年、3年生は受験に備えて退部してしまうらしく、私の記憶でも当時たしか1人だったが、今年は4人も残っている。それについて、灘高校の北浦監督は新聞記者にこう言った。

やめて後悔する子はいますが、続けて後悔する子はいません

監督さんええこと言うた!ほんとにその通りやと思う。
13年前、うちの高校で3年夏の最後まで続けたのは私と主将の2人だけ。灘ほどではないが、当時は県下でも名の通った進学校だったし、野球部は弱小の一語に尽きるようなところ。10人以上いた同学年の部員は、親の重圧もあって1人、また1人と辞めてしまった。
辞めた子がええとこ受かって、続けた子がアカンかったら、親が何を言ってくるかは火を見るよりも明らか。「野球をやるために行かせた学校ではない」のだ。最後に残った2人は「これでアカンかったら、後輩らにも迷惑がかかる」と(たぶん)必死に頑張った。後輩らに野球を続けさせるためには、おれらがやるしかない。結果、2人揃って京都大学に現役合格。受験の成績としては、文句を言われる筋合いはない。逆に、辞めていった部員たちの受験結果は芳しいものではなかった。いっこ下の後輩からは、「おめでとうございます」だけでなく「ありがとうございます」と言われた。これで、最後まで野球ができると。
そしてその夏、彼らは最後まで誰一人辞めず、甲子園に行った。
正確に書けば、兵庫県予選1回戦、試合会場が甲子園球場だった。100人を越す応援団は…甲子園球場にはあまりにも少なすぎた。甲子園は、とても、とても広かったらしい。その日、私は大学野球部の試合で北海道にいた。今も残念に思えてならない。
引退後、いっこ下の主将は、部室の壁に甲子園で3安打と書き残した。間違いなく人生最高の思い出。後悔なんか、あるはずない。