負けに不思議の負けなし

朝日文庫から出た、野村監督の著書。上下巻で各500円。1984年頃に新聞に連載されていたエッセイが大半で、たまに対談が載ってる。
なにせ時代が古いから、いま巨人の監督の原辰徳がまだ青二才扱い、ベテランとして登場するのは福本豊、江夏、田淵といった殿堂クラスの面々。マニアックな知識が身に付いたりするけれど、プロ野球に興味のある人なら読んでいておもしろいと思う。
野村監督の著書なんだけども、森祇晶(もと西武ライオンズ監督)の言葉が印象に残ったので引用してみる。

野村
「あんたは、10点取られても11点は取られまいとするキャッチャー。わしは、10対0、もうええわってタイプ(笑)」
「10点とられても、あとの1点をとにかくやらん、という考え方がキャッチャーにいちばん大事なことであって、勝負なんてものはどう転がるか分からない。あきらめたらそこで終わりだし、1点取られても、2点目は何とか防ぐ。2点取られたら3点目はなんとか防ごう。その1点が必ずどこかで響いてくる。130ゲームの中で、一つ二つ、そういうことの努力によって拾うことができたら、それは大きな星になって変わってくるからね。それは数字では表れてこないものであって、それこそキャッチャーとしての本領でしょうね。

森さんの堅いところがよく表れている気がする。この対談記事は1984年2月24日のもの。2年後の1986年から森さんは西武ライオンズの監督を務め、1年目から3年連続日本一に導くなど、9年間で8度のリーグ優勝。その黄金時代を支えたのは、森さんの愛弟子・伊藤勤捕手だというのは、言うまでもない。