それは原因なのか

中学生の不登校について、こんな調査結果が出たらしい。毎日新聞より。

<中学生不登校>生活苦も原因 保護世帯の1割 東京・板橋

 生活保護を受ける世帯の中学生の不登校発生率が、生活保護や就学援助を受けない中学生の4.8倍に上ることが、東京都板橋区の調査で分かった。不登校は学校嫌いが原因とみられがちで、国も家庭の経済状況との関連を調べていない。低所得も大きな要因とわかったことを受け、都内の一部自治体は、生活保護不登校児童生徒を支援する事業を始めた。国も背景分析や支援が求められそうだ。
 就学援助は給食費などを助成する制度で、所得基準は生活保護よりやや緩い。板橋区の就学援助受給率は35%、生活保護の保護率は2.47%で、共に全国平均の倍以上だ。
 板橋区は、中学生の不登校が多いため調査を実施。区立中の06年度の全生徒8844人のうち、援助を受けていないのは5267人。不登校はうち127人で、発生率は2.41%だった。一方、生活保護を受ける中学生449人中、不登校は52人。発生率は11.58%で援助を受けない子の4.8倍に達した。
 また杉並区は昨秋、生活保護を受ける中学生70人を調査。ケースワーカーが「いつも家にいる」ことから不登校と判断した中学生は6人で発生率8.6%。前年同期の区全体の不登校発生率(2.19%)の約4倍だった。
 板橋区は昨秋から「貧困の再生産を防ぎ、子どもの自己実現を図る」ため、生活保護世帯で不登校の小中学生に、学習ボランティアの派遣費を年6万4000円助成。杉並区もフリースクールの受講費と通学費で年最大約20万円を支給する。共に都の生活保護世帯自立促進事業の一環だ。
 学校関係者の間では、貧困のため親が食事や洗濯の世話を怠り、生活リズムが乱れ学校に来なくなる子の存在が指摘されていた。

生活保護を受けているということと、不登校の割合が高いことには相関関係があるからといって、それだけで不登校の原因が生活苦であるとは断定できない。生活苦にも何らかの原因があり、その大本の原因が不登校を呼び起こす直接的な要因ということも考えられる。その場合、生活苦と不登校には関連性はあっても因果関係はないと言えるはずだ。言い換えれば、親戚ではあるが親子ではない。
これに似た話で、「東大生の親の平均年収」というのがある。東大生の親の平均年収は、一般的な平均年収よりもかなり高いのだという。ほかにも、代々医者の家系だとか、祖父の代から慶應ボーイとか、そういう例が世の中にはある。これをもって、「お金がないと東大には入れない」とか、「お金があれば高い教育が受けられる」と言う人がいるのだけど、それは間違いではないとしても、正鵠を射ているとは言えないと思う。高学歴の子の家庭について30年に亘って行われた調査では、親の収入よりも親の学歴の方が関連性が高かったと聞いたことがある。下のような仮説を立ててみよう。

  1. 高い水準の教育を受けた人ほど、得られる収入が高い傾向にある
  2. 高い水準の教育を受けた人ほど、自分の子にも高い水準の教育を受けさせようとする傾向にある

これらを合わせれば、高収入の家庭と高学歴の子についての関連を説明できる。前者は明快、学歴と給料の相関について。後者は、言い換えると、高い水準の教育を受けた人ほど、「教育」の価値を重んじる傾向にあるということになる。もちろん、これはあくまでも「傾向」であり、自分は高学歴だが勉強に明け暮れた暗い学生時代を我が子には味わわせたくない親もいたり、社会に出て苦労したから子供には高い教育を、という親もいよう。だが、勉強が好きな人と嫌いな人とでは、一般的に言って嫌いな人の方が学力は低い。勉強が嫌いだった親は、子供が勉強を嫌がっても当然と考え、無理強いしないかもしれない。学校を休みがちだった親は、学校に行かねばならない、行かせなければならないという感覚も薄いだろう。不登校について、「行きたくても行けない」のか、「行きたくないから行かない」のか。「行かせたくても行かせられない」のか、「別に行かせなくてもいいから行かせてない」のか。いつも家にいるという事実は同じでも、その意味合いは大きく違う。子供本人の学校に対する好き嫌いより、学校や教育というものに対する親の考えのほうが影響が大きいと思う。憲法も、子供には教育を受ける権利があるのみだが、親には子供に教育を受けさせる義務があると定めている。これはたった3つしかない国民の義務の一つであり、自由や権利が数多く定められているのと比べて重みがある。
貧困の再生産を防ぐことは重要であり、そのために子供に教育を施すことも必要だと思うが、その趣旨を平たく言えば「あんた勉強してこなかったから今貧乏なんだ、子供も勉強しなかったら貧乏になるぞ」ってことである。まず親に対して教育の重要性を分からせねばならない。子供の教育費より自分のパチンコ代を欲しがる親を撲滅せねばならないと思う。