産科医の人件費助成

うちの実家から国立姫路病院*1ここ)は、裏門なら徒歩1分。正門なら徒歩5分の距離にある。サイトを見れば分かるとおり、立派な病院だ。数年前に(つまり独立行政法人になる直前に)リフレッシュ工事をして、見違えるほどきれいになった。こんな病院が近くにあるということは、いざというときのことを思うと非常に心強い。
うちの兄の長女は、4年前にこの病院で生まれた。
同じく姉の長男も、2年前にこの病院で生まれた。
しかし姉の長女は、先月姫路聖マリア病院で生まれた。ここは家から車で20分ほどかかる、私立の病院だ。設備はきれいだし、評判もいいが、わざわざ遠くの病院に切り替えるような理由にはならない。しかも姉はペーパードライバーで、検診ひとつ受けるにもわざわざ母についてきてもらう必要があるのに。
なぜこんなことになったか。国立姫路病院が、分娩の受け付けをやめたからだ(以下に抜粋、原文はここ参照)。

 平成19年4月から当院産婦人科医師の減少に伴い、一時的に分娩の取り扱いを中止させて頂きます。皆様にはご迷惑をおかけしますがご理解とご協力をお願い申し上げます。
 なお、里帰り分娩予定等の理由で、当院で妊婦健診のみを希望される方は、お申し出いただきましたら健診をさせて頂きます。

一時的に中止と書いてはあるが、求人情報を見てみると、産婦人科医を重点的に募集しているわけではないここ)。集めようとしているけど集まらないのであればある種やむを得ないが、集めようともしていない。暫定とか一時的とかいうのは役人がよく使う論法なのだろうか。
産科医の減少は、急変などによる緊急性の高さから来る多忙さや、訴訟リスクの高さなどが原因といわれているが、そういった民間の業者が嫌うことを率先して(あるいはやむなく)引き受けることにこそ、税金を投入する価値があるのではないか。国立病院がさっさと逃げ出すようでは話にならない。赤字の産科医に人件費を補助するなどというのは、本来国立や公立の病院が引き受けるべき義務をカネつきで民間に売り払おうとしているだけの話。そんな金があるなら、まず国公立の病院における産科医の確保に用いるべきだろう。国から民間に引き渡すべき業務は他にあるはずだ。

*1:現在の正式名称は「独立行政法人国立病院機構 姫路医療センター」らしい。長ったらしい