よいお年を

年の暮れに用いられる挨拶の代表例だと思うが、これについて細かいことをいろいろ考えてみた。
まず、「よいお年」というのは、何を指しているのか?

  1. 去りゆく今年の残りわずかだけれども、終わりよければすべてよしと言うし、よいお年をお過ごし下さい
  2. 今年はもう終わりますが、よいお年をお迎えください

これは明らかに後者だ。ATOKだって「よいお年をお迎えください」という慣用表現を勝手に出してくれた。つまり、よいお年というのは未だ来たらざる年のことを指しており、年末にしか使えない挨拶である。年が明けてから「よいお年を(お過ごし下さい)」などという挨拶はない。少なくとも、これまで29回迎えてきた新年でそのようなことを言われた記憶はない。
何を当たり前なことを、と言われるのは百も承知。
しかし英語のHappy new yearは、年末にも年始にも使える挨拶だという。Happy new yearは「あけましておめでとう」だ、と信じていたが、どうやらそうではないらしい。たしかに、誰もが一度は聞いたことのあるあの歌は、明らかにクリスマス前から歌われる歌であるが

We Wish you a Merry Christmas, We Wish you a Merry Christmas, We Wish you a Merry Christmas, and a Happy New Year.

あなたにとって幸せな新しい年になりますように、ということか。そう訳せば、年末にHappy new yearを使ってもおかしくない。
…思い出したぞ、1998年の年末、ミラノの空港での出来事を。見るからに欧州人とおぼしき男性に言われたあの言葉。彼はきっと、Happy new yearのつもりで言ったのだ。「あけましておめでとう」と(ここ参照)。
そんなわけで、よいお年をお迎えください。