蛙が兎を投げ飛ばす

兎が木の枝を大上段に構え、猿を追いかける。国宝に指定されている品物の中で最も笑える一品(だと思う)・鳥獣人物戯画を見てきた。
京都の高山寺に所蔵されているこの絵巻物を東京で見るというのも、複雑な思いではあるが、こういったものを展示するには温度や湿度をしっかり管理できる場所でなければならないので、その寺で見るというわけにはいかないのだろう。
六本木の東京ミッドタウンとかいうオシャレスポットに入ると、床に兎と蛙の足跡をデザインしたステッカーが貼ってある(写真を取り忘れたのは痛恨の極み)。chojuとかgigaと書いてあるそれが、ミッドタウン内のサントリー美術館への案内だ。
鳥獣戯画について私ごときが何を論じることもない。描かれている動物たちの躍動感あふれる動きは見ているだけで楽しいのだ。この特別展は前期と後期に分かれていて、4巻ある巻物の前半と後半をそれぞれ展示するというスケジュール。見たかった相撲の場面と追いかけっこの場面はいずれも後期、つまり今回見ることができた。これも日頃の行いの良さのおかげだろう。
国宝鳥獣人物戯画だけでなく、その模写、またそれが影響を与えたと思われる作品も同時に展示されているのだが、これがまた強烈。「放屁合戦絵巻」などという作品もあったのだが、今回を逃せば一体いつ何の展覧会で展示するのだというほどお下品。もちろん撮影は禁止されているので写真はないが、屁のエネルギーで扇子を割るという小学生向けマンガに近い描写には恐れ入ってしまった。