おもしろい記録

ヤンキース松井秀喜選手に対する近年の評価は、概ね以下のような感じだろう。いい働きをしているんだろうけれども、人の目を惹きつけるような活躍はしていない--。
たしかに、イチローという華々しい選手と比べて、獲得したタイトルも少ないし、メジャーの並み居るパワーヒッターに埋もれてしまったような感じはする。しかしその松井秀喜が、最近40年間にメジャーでプレーした選手の中で歴代トップの数字を持っているというのだ。
それは、無死または一死の、三塁走者がいる場面(他の塁にもいる場合を含む)で、打点を稼ぐ確率。71.8%というその数字を高いと見るか低いと見るかだが、歴代最高だというのだから高いのだろう。
無死または一死三塁という場面は、攻撃側としては何としても点を取りたい、取れるはずといえる場面である。だがそれだけに、取れなかったときの落胆は他のどの場面より大きい。野球はどれだけ多く安打を打とうと、塁を走者で埋めようと、その走者を本塁に返して初めて得点が認められるスポーツだから、ここの詰めがきっちりできるか否かというのは非常に大きな差として現れる。
ヤンキースジョー・トーリ監督が、「ヒデキはチームに必要な選手だ」と言い続けていることに対し、日本人のファンには「リップサービスか、奮起を促す言葉じゃないか」と考える人も多いのではないかと思う。しかし彼は松井が「取れるところはきっちり取る」ことができる選手だということを、このような記録が表に出る前から理解していたのだろう。
今年のヤンキースは某茨城県出身左腕に裏切られたこともあって苦戦しているが、プレーオフには何としても滑り込んでくるだろう。取るべき点を、勝つべき試合を、きっちりと取って。