メトロにノリノリノリノリ

「ああ、あと2ヶ月でこことおさらばできるんやな」
心からそう思ったのは、ひとつには駅でこのポスターを見たからだ。いくつかデザインがあるが、電車の中でやたら陽気に盛り上がっているデザインのやつである。
こんな混みまくった電車に押し込まれながら、芝居とはいえ陽気なフリをするなんて、ちょっと考えられん。あの混雑した車内を平然と「日常」として受け止めてしまうような場所で暮らすのは、私という人間にはやはり無理だ。根っからの田舎者なのかもしれんけどね。赤の他人との物理的な接触を強いられれば強いられるほど、人は他人に対して殻を閉ざさざるを得ないのだろう。いちいち反応していては身が持たないからだ。ストレス社会だの何だのと言うけれど、この「痛勤」と呼ばれて久しい電車内を何とかしようとは思わんのだろうか。
痴漢に遭う心配のない、私のようなむさ苦しい男でもこう思うのだから、若い女性などは耐え難いのではないかと思うのだが、それよりも東京に対するあこがれのほうが強いのだろうか。分からない。
もうひとつ。我が職場の南隣のビルが建て替えのため取り壊されたのだが、そのおかげで空が広々と見えたのである。私は姫路市で18年、京都で9年暮らしたのだが、どちらの街も高層建築には非常にうるさい。姫路城の周りは最高で3階建てであり、おかげで数キロ彼方からでも姫路城の優美な姿を見ることができる。京都でも、17階建てのホテルができた時に大騒動になったほどだ。今にして思うことだが、京都の町で何となく居心地の良さを感じていたのは、おそらく建物が低いことも大きな要因だったのだろう。
みんながノリノリなところ非常に申し訳ないが、私は後2ヶ月でメトロから降りさせてもらうことにする。