何をぬかしとるんでしょうな

こないだから、民法772条に関する記事がぽつぽつと新聞に出ている。民法772条とは「嫡出の推定」についての規定であって、

1. 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2. 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

となっているやつ。法律用語において「Aであると推定する」とは、Aでない理由が明示されない限りAとして取り扱うということで、ちゃんと根拠を持っていけば覆すことができるわけやね。ロースクール在学中の人も見てると思うので、間違ってたら訂正プリーズ。
この条文を解釈すると、「Aさんとの婚姻の解消(=離婚)後300日以内に生まれた子は、Aさんとの婚姻中に懐胎した子と推定され(1.より)、つまりAさんの子と推定される(2.より)」わけ。まぁ、普通に考えれば妊娠してから十月十日というやつで、300日という数字はそれなりに根拠があるんだけども、この300日という数字は100年以上前から変わってないのだそうな。最近問題になったのが早産のとき。予定日では300日以上あとのはずだったのに、265日目で出てきた…。昔はそんな早産で出てきた未熟児は死んでしまったのかな。可哀想に、この子は前夫の子と扱われてしまったのだとか。仕方なく家庭裁判所に行って、手続きを踏んで、やっと現夫の子として扱ってもらったと思ったら、戸籍に前夫の名前が残っているんだって。法務省曰く、「前夫の子ではないことを明確に示すため」…だって。あのさ、「現夫の子である」ことを明示すれば、それは現夫の他に数多いる男の誰の子でもないことを明確に示していると思うんだが、論理的な思考ができないのだろうか。
戸籍がらみで別の話になるけれど、出生届を出したのに死亡扱いされてしまった子がいて、それを新しい紙に書き換えたりするのではなく、「再製」とか書き加えて処理した、なんて話があった(ここ参照)。それを知った親は当然怒って修正を求め、念書まで書いたにもかかわらず11年もそのままだったらしい。
たしかに、戸籍というものは人を国民として登録し、それに伴う義務や権利の基本中の基本データだから、軽々に修正すべきものではないだろう。しかしそれは義務を逃れたり権利を喪ったりすることを防ぐことが目的であろう。担当者が軽率なミスをしたのであれば、その不利益を市民に被せていいわけがない。
世の実情に合わせて改正*1しないといけない、でも改正が間に合わなくとも、今の規定のままでも対応できることはあるはずだ。法律とは文章をそのまま現実に適用すればよいのではなく、その法律が制定された背景、いわゆる「法の趣旨」というやつを考慮してやらねばならない。何のための公務員試験なのか?教員免許や医師免許に更新制度を導入する、なんてことを官僚主導で言い出すなら、公務員も同様の免許制にしたらどうだろう。

*1:民法はたびたび改正されているし、民法だけでも1000条を越す条文があるし、関連法令も尋常じゃないからむちゃくちゃ大変なのは分かるけど