ようするに

大学が多すぎるのだ。
大学が増えすぎて、大学入学が当たり前になったために、本来は大学に入学すべきでないレベルの学力しかない高校生まで受験するようになった。それに迎合して入試科目が減った。英語と国語だけとか、英語と数学だけとか、必修科目をまったく勉強しなくても合格できる大学がヤマほどある。受験に不要な科目がおろそかになって、今回の未履修につながったという点は否定できないだろう。
ほかにもある。大学に行くのが当たり前になっているから、目的意識もなく大学に入って、無駄に4年間を使う若者がいっぱい出る。体力も、新しいことを吸収する力も人生でもっとも豊かな時期であるのに、その4年間を無駄に過ごしている。ニートの比率は、高卒や中退が5割強、高専・短大・大卒は4割弱というが、高卒のほうが求人倍率が厳しいことを考慮すると、就職に対する意欲が低いのはむしろ大卒側であると言っていいと思う。これはやはり無目的に大学に入った層が影響しているのではないか。
大学が少なければ、そういった層は受験競争を勝ち抜けず、働く若者が増える。高卒だと採ってくれない、高卒の就職率が低いと言われているのは採用枠の問題で、大卒者の総数が少なければ高卒以下の採用枠は当然増やさざるを得ない。高卒者の就職市場は活性化し、希望の職に就ける高卒者も増えるだろう。そうすれば離職者も減る。さらに、若いうちから働く人が増えることは社会保障の観点からも有効だ。退職年齢から平均寿命までの年数はどんどん伸び、就職年齢も高齢化しているとなると、勤労者の負担は重くなる一方である。定年を65歳にする、定年後の再雇用を活発にすることも大事だが、若者の離職を減らすことも重要な課題だ。
思いつくままに列挙してみると…

大学が増えた→大卒が当たり前になった→大学院を増やした→オーバードクターが増えた
大卒が増えた→大卒が当たり前になった→結婚年齢が上がった→出産年齢が上がった→少子化社会保障の圧迫
大卒が増えた→大卒が当たり前になった→高卒の採用が厳しくなった→就業年齢が高くなった→勤労人口の減少→社会保障の圧迫
大学が増えた→大学入学が当たり前になった→高卒就職希望者が減った→就業年齢が高くなった→勤労人口の減少→社会保障の圧迫

はっきり言ってろくなことがない。大学が少ない地域の若者に高等教育の機会を提供するための新設はよいと思うが、学生を集めやすい都市圏にボコボコ作ってるのが現実だろう。高等教育を受ける機会は全国民に開かれていなければならないが、大学に入学する者はあくまでも能力と意思を備えた者でなければならない。今の日本の高校生はまだ、大学に入れば4年間遊べると考えているだろう。社会にとって大きな損失である。勉強する気がないならば、さっさと働けばよいのだ。
数年前、フランスで受験に必要な科目数を減らそうとしたら高校生から猛烈な反対運動が起きたという。高等教育を望む学生とはそうでなければならない。日本の文教政策は?情けない話である。