サッカーというスポーツ

サッカーというスポーツは実にシンプルで、必要な道具も少なく、それぞれのレベルやその時集まった人数に合わせて楽しめるスポーツだと思う。それゆえに世界のあらゆる国で親しまれ、このようなワールドカップという世界規模の大会が盛り上がるわけだ。「ワールドカップ」という呼称はゴルフやラグビーでも用いられているにもかかわらず、まずサッカーのそれを思い出すことも、その証明の一つと言っていいかも知れない。
ひきかえ、野球は世界的に見ると普及率が低く、オリンピックの競技から外されてしまうという事態にもなっている。そしてその普及率の低さが何によるものかというと、必要な道具の多様さ、人数の多さ、投手に求められる最低限の技術水準の高さ、球場設備の複雑さ…挙げればきりがない。きっちりと整った環境やメンバーによる野球は実に精密で奥深いものだと思うが、広く世界のどこででも楽しめるかと言われると、答えは残念ながらノーだろう。
さてそのサッカーはシンプルさゆえに熱狂を生むのだが、個人的にはもう少しベンチワークが入り込む余地があってもいいのではないかと思う。前後半90分という長い時間、あの広いフィールドの中で走り回らなければならないスポーツでありながら、許される選手交代は3名まで。レベルの低い試合だと、終わりの30分はジョギングと変わらない動きしか見られない…などということにもなりかねない。「90分走り回るスタミナあってこそ、トッププレイヤーだ」という考えはもちろんあるだろうが、どれだけタフであろうと、消費したスタミナが少ないほど最高に近いスピードと技術が発揮できるであろうことは当然のこと。バスケットボールのように入れ替えを自由にしたり、野球のようにベンチメンバーを全部出せるようにしてはどうだろう?限られた交代枠をどう使うかというのも見所だが、それを補って余りあるほどの戦術性が付加されるのではないかと、私は思う。
あるいは、前後半(あるいはクォーター制を採用して)でそれぞれ交代枠をリセットし、あたかもニューゲームのように扱うとか。そうすると前半と後半でスタメンを大きく入れ替えつつ、前半活躍した選手を後半途中からまた出場させることができるようになる。
そう簡単にルールなど変えられるものか、という人もいるだろうが、テレビ中継のスタイルに合うようにと大幅にルールが変わったバレーボールのような例もある。無理なことではないだろう。
要するに、バテバテの16人と元気ハツラツの6人、みたいな光景はあんまり美しいものとは思えないのである。観る側の論理として、90分間、ピッチの中は常に元気に溢れた22人であってほしいのだ。