人身事故

(若干生々しい記述があるんで、読みたくない人は飛ばしてください)
今日15時15分頃、私はJR兵庫駅で上り(神戸大阪方面)の列車を待っていた。一駅先には神戸駅。そこで折り返し、下り線の新快速に乗るのが、姫路への最速経路である*1
「まもなく 1番乗り場を 列車が 通過します ご注意下さい」
女性の声が無表情にそう告げる。程なく、貨物列車が滑り込んできた。
突然、貨物が警笛を鳴らす。なんどい、やかましいのぉ…と思った次の瞬間、ギギギギギギギギギィ!金属同士がこすれあう、ものすごい音。200mほど走って、貨物列車は止まった。誰がどう考えたって、事故である。線路上の置石でも見つけたか?何処の誰や、また余計なことしやがって…そう思った私はホームの先端まで歩いて、先に何かあるのかを見ようとした。しかしその先の線路は大きくカーブしていて、機関車は見えない。先の車両が傾いて見えるのは、線路事態のカント(傾き)のせいである。よく見ると、下りの新快速列車がこちらを向いて止まっている。やはり人でも立ち入ったのか?しかしここは高架区間である。はておかしいな、と思っていたら、下り線のホームを駅員が猛ダッシュ。階段を降り、30秒後、担架を持って私のいる上りホームに現れた。警笛が鳴った時私がいた位置から、わずか25mのところに、駅員はもぐりこんでいく。先頭車両は150m以上先。車両は1両あたり約20mで、1両あたり車輪は4軸8輪。最悪、60個の車輪に踏まれた計算になる。普通に考えて、絶望的。どうやら、おばあさんらしい。「せーの!」ジャリジャリッと、線路の敷石が音を立てる。「シートかけて!」人目に触れる前に、担架にはブルーシートがかけられ、ホームへ運ばれてきた。足が見える。足首は真っ赤だった。
パトカーがきた。警官が何人か、手際よく「兵庫県警 立入禁止」と書かれた黄色いテープを現場の周囲に張る。駅員と保線担当っぽい人々に事情を聞きつつ、目撃者を求めていた。誰もいないようだ。ホームにはおばあさんの物と思われる手提げかばん。引き上げられた場所より10m手前だった。
下り線の新快速が動き出した。1番線以外は運行を再開するようだ。こんな状況では折り返し作戦は適切とは言えないので、私は上りホームを後にし、下りホームへ向かった。
20分以上遅れて入線してきた普通列車に乗り、ふと思った。「もしおばあさんが線路に落ちるのを見ていたら、どうしただろう?」おばあさんが転落したタイミングはわからないが、仮に時間的余裕があったとしても、ホーム下の退避場所を知らなければ犬死だ。しかし、列車の下敷きになる瞬間など見ていられないだろう。川でおぼれる人を助けようとして命を落とす、という痛ましいニュースを時々目にするが、もしかしたら自分がそうなっていたかもしれない、と思うと、ちょっとしんどい帰り道だった。

*1:厳密には無賃乗車になるらしい