擬似エンジン音装置発売

コレ
以前にも「夢のない解決策」とこきおろしたところだけれど、法律が出来上がってしまったのに合わせてついに発売されてしまったらしい。しかし正直なところ、今日日の車はアクセルオフで惰性走行していればとっても静かなので、ハイブリッド車だけをターゲットにするのはおかしいと思う。チャリンコでも十分ケガをするし、荷物満載のリヤカーならすぐに止まれない。イヤホンで音楽聴きながら歩いている人には何の効果もない。そもそも、「音がしなくても走る車がある」ことはもう周知の事実だというのに、音がしないことを判断の根拠にすること自体がおかしい。私が轢かれたのはエンジン音が聞こえなかったからだ、なんていうのはマクドのコーヒーが熱すぎてヤケドしたアメリカ人と同じ理屈だ。やかましいからクラクションを鳴らすな、でも静かすぎると危ないからエンジン音はさせろ…とは、笑わせるではないか。それなら音量の小さな対人クラクションを義務化したらどうだろう。正直、自分の車にも欲しい。クラクションがやかましいのは、少し遠くの走行中の車内にいる人に聞かせるためだから。
車は、曲がるときにウインカーを点滅させなければならない。それと同様に歩行者も道に出るときは振り返って確認するのがスジだろう。自分が後ろを見るだけでなく、後続に対して「私は今からこちらへ動きます」というアピールにもなる。目が見えないから振り返る意味がないのではなく、むしろ目が見えないからこそ気づいてもらうための動きをすべきだと思う。…とまぁこんなことを言うと「弱者にばかり負担をかけるな」とか言ってかみつく人もいるかもしれんけど、今が手抜きなだけやし、後ろを振り返るという行動にどれだけの負担があるというのか。たったそれだけの動きを習慣づければ、事故はぐっと減るはず。コストパフォーマンスでいえば最上だと思う。「振り返らずに飛び出す歩行者がいる」ことを前提に、この類の事故をゼロにしようとすれば、人が視界に入ったら即徐行ってことになる。それでは世の中に車がある意味がない。
もちろん、この擬似エンジン音装置が無意味だとは思わない。これのおかげで事故は多少なりとも減るだろう、増えることは多分なかろうと思う。私がこれを気に入らないのは、あまりにも表面的で、浅はかで、一方的(で、ついでに夢がない)だと思うからだ。「車の側も気をつけます、歩行者も基本に立ち返って気をつけてください」とちゃんと言ってやればいいのに。
ただ、この商品のパッケージには「エンジン音がしないことによる不用意な事故軽減!」とある。「不用意」なのは運転者ではなく歩行者だというのは、語義からして明らか。気ぃつけて歩け、という製造者の皮肉だと思うことで、心の平静を保とう…。