痛烈なサードライナー

夏の甲子園勝戦にふさわしい試合やったね。
まぁ、この「ふさわしい」って何のことやねん、どこ目線やねんという気がせんでもないけどね。接戦や激戦がふさわしくて、圧勝はふさわしくないのか?松坂がノーヒッターをやってのけた試合は?まぁええか。
中盤までは、まさに「エースで4番を打たせるな」という金言が示すような展開。中京大中京のエースで4番・堂林くんがすさまじい活躍を見せ、チームを波に乗せた。投手としてのプロ入りは厳しいかもしれんけど、打者としては楽しみ。
終盤、日本文理が7回8回に1点ずつ返したあたりから、すでにドラマの準備ができていたのかもしれない。6点差の9回、エースを再びマウンドに上げた中京大中京としては、この回きっちり抑えて、堂林君を称えるというシナリオを用意したかも知れんけど、2人の打者をポンポンと打ち取る間に、甲子園の魔物はそれをせっせと書き直していたらしい。まさかの7連続出塁、5得点で1点差まで追い上げて、そして2アウト一、三塁からの痛烈な打球は、三塁手のグラブの中へ。
魔物は、シナリオに「ジャストミート」までしか書かんかったんやろうか?追撃はここで終わり、中京大中京の優勝が決まった。
甲子園球児の放つサードライナーは、おそらく時速150km/hくらいにはなるやろうし、テレビのカメラが追いつかなかったように、打ってから0.6〜0.7秒ほどで三塁手に届く。その時、打者はまだ打席の中にいるどころか、手からバットも離れていないような瞬間。打った感触も、打球の仰角、速度も最高、でも結果は最悪…。痛烈なサードライナーを打ってから捕られるまでのあの気持ち、あの風景は、打ったことのある人間にしか分からんと思う。
でももし、日本文理が先攻じゃなくて後攻なら、もしかしたらあの打球は抜けて一塁走者が長駆ホームイン、サヨナラになっていたかも知れない。そんなことないわ、サードライナーはサードライナーかもしれんけど、でももしかしたらと思ってしまう。そんな余韻を残すってことは、やっぱり決勝戦にふさわしい試合だったのかもしれない。