法医学のドラマ

えっと、私いま某国立大学の医学部で会計やっとりまして、司法解剖にかかる経費も担当しておるので、ちらっと見てみたんですが…。法医学はせいぜい小道具程度の存在感。何じゃこりゃ、でした。野球が好きとか嫌いとか、周囲の人への聞き込みなんて法医学とは関係ない。少年探偵団と大差ない。
さて、劇中で教授がこんなこと言ってました、

「法医学に必要なのはイマジネーションだ」

ええ、それは法医学に限らず素晴らしい資質だと思うんですが、イマジネーションには常に裏付けが必要だと思うのですよ。同じ時間帯で以前やってた「ガリレオ」では湯川先生はこう言ってました。

「まだ仮説の段階だ、これからそれを実証する」

まぁ、事件のトリックについての解は1つとは限らないので、同じ結果を生む方法が複数ある場合については、湯川先生の「実証」は的外れである可能性もあるわけですが、裏付けがなされるまでは無責任なことは言わないというスタンスでした。
今回主演の瑛太君(役柄の名前は何やったかしらん)は、被害者の元妻に会う前に、飛び降りた少年についての裏付けをしとかなあかんかったはず。彼が口にした言葉は、あの段階では全て「絵空事」。イマジネーション=想像という言葉で表される概念にはいろんな種類がありますが、あれは空想や妄想に類するもの。知り合いと喋るだけならいざ知らず、初対面の、遺族に等しい立場の方に、捜査関係者ですらない学生が一体何をしているのかと興ざめでした。
裏付けが大事というのは、ドラマ作りそのものについても言えることでしょう。私だって法医学について詳しいわけではないけれども、法医学についての裏付け*1、医学部についての裏付けというものが不足している*2というツッコミが早くもwebにあふれております。ドラマだけでなくバラエティでも、しっかり裏付けされた作品、よく作り込まれた番組を見せてもらいたいもんです。

*1:本学の法医学講座の秘書さんいわく「うちの教授もあんなことしたことない、したらあかんて言うてました」。でもやっぱり見てるんやな

*2:医学部における専門教育は全てが必修科目なので、法医学の講義を法医学講座の学生だけが受けるというような状況はあり得ない、等