法務省オンライン申請システムを使ってみた

ITを「イット」と読んだ森喜朗元首相が推進した電子政府。使いづらいとかとっつきにくいとか酷評されまくっていたので敬遠していたが、ちょっと必要があったので使ってみることにした。
申請を行ったのは、「不動産登記事項証明書の送付請求」。
人間に喩えれば住民票か戸籍謄本の写しを請求するような、どちらかというと内容の軽い申請である。出生や死亡、婚姻や離婚に喩えることができそうな、建物の新築や所有権の移転に係る登記のような重たいものではないので、本人確認についてもハードルは低く設定されている。システムの出来そのものはそんなに悪くないように思ったが、そのシステムをPCに導入するまでについては「誰でもカンタン、楽々申請」とはとても言い難いというのが実感である。

動作環境を確認

こちらに、動作環境が書かれているが、この時点で、もう導入を諦める人もいるかもしれない…。要求されるPCの性能が高すぎるわけではなく、「何のことか分からない→こんなん無理」と考える人は少なくないだろう。「WWWサーバとHTTPによりインターネットを介して接続が可能なこと。」という一文を正しく理解でき、自分の環境がそれに合致しているかどうか判断できる一般市民はそうはいない。

証明書とソフトウェアのインストール

ワード、エクセル、ネットとメールしかしない人にとっては、「安全な通信を行うために必要な証明書」が紙切れではなく電子データであるのだと、分かるだろうか。表現が正確でなくても、「証明プログラム」「証明ソフト」といった、「あ、パソコンの中に入れるものなんだね」と直感できる表現の方がいいような気がする。
で、それをダウンロードしてインストールしようとしたら、なんと証明書の信頼性が確認できないと出てくる。Firefoxを使って作業しているとブロックを食らってしまった*1怖い!いったい何のための証明書ですかという気持ちになる。
その恐怖を乗り越えたら、今度はJREのインストールである。JRAなら知っていても、JREといわれてさっと理解できる一般市民はそうはいない*2。この文章を書いたのは開発業者だろうけれども、これを掲載するに当たって決裁した担当者は誰なんだ。これを読んで「ああ、何書いてるか分からんけどまぁいいや、分かる人には分かるんだろう」…ではだめである。あんたみたいな人でもちゃんと読んだら分かる書き方にしないと、膨大な国費を投入したシステムが活用されないままになってしまうのだから。「全然分からん、わしに分かるように書け!」と言って却下しないと。
最悪なのは電子署名の部分である(これ)。私が行いたい手続には電子署名が必要なかったので読み飛ばしたけれども、こんなもん、わかるかっ!というか、読む気にもならん。ま、実はICカードの読み取り/書き込み機を買ってきてパソコンにつなぎ、住基カード(ほかにもあるかも)を差し込む必要があるんだけども、そんなもん誰も持ってない、売ってるところも見たことない人がほとんどだろう。役場の窓口では売ってくれるんだろうか。電子政府を推進したいのならば、せめて役場で販売すべきだと思うのだが。

システムを使う

さて、文句ばっかり垂れてきたけれど、ようやくこれでスタートラインである。ところが導入までの煩雑さ・難解さとは打って変わって、使うのはけっこう楽ちんであった。

申請書データの作成
必要事項を漏らさず入力できる様式作成支援ソフトのおかげで、確実に作成できる
データの送信
作成したデータを送信すると、必要な手数料を教えてくれる
手数料の支払い
全ての金融機関が網羅されているわけではないが、任意の金融機関のインターネットバンキングのサイトに自動的に飛び、金額や申請番号などのデータも自動的に引き継いで支払ができる。振込手数料が無料である旨をもう少し分かりやすいところに書いておいて欲しかったけれども、ネットバンクを常用している人間からするとこれは非常に便利だった。ただ支払方法が限られていて、ネットバンキングか電子納付対応のATMでないと支払えないというのはちょっと厳しいところ。

たまたま私は京都銀行新生銀行住信SBIと3種類のネットバンクを利用していたが、そのうち対応していたのは京都銀行のみ。それがダメなら、三井住友の休眠口座を呼び起こさないといけないところだった。対応金融機関をもっと拡充して欲しいなぁ。

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今まで身分証明書と印鑑でもって対面式でやってきたことを、インターネット経由でやろうとするといろんな問題点があるのは分かるんだけども、もう少しシンプルにはできないものか、わかりやすくできないものか。最後になったけれども、全手続件数のうちオンラインからの申請の割合を示した表を見つけたので、下に記す。

申請の種類 オンライン申請が占める割合
登記の申請 1.54%
登記事項証明書の交付請求等 23.24%

不動産登記の申請って誰でもできるけど、司法書士にお願いする人だってたくさんいる。しょっちゅう登記を行うようなその道のプロを含んだ上で1.5%の利用率とは驚きの低さだ。一般市民による利用率はおそらくゼロだろうな…。

*1:ただし動作環境はIE指定であり、IEであればそんな厳しく叱られない

*2:Java Runtime Environmentの略、Javaという種類のプログラムをIEで利用するための補助ソフト、と言えばなんとなく分かってもらえるだろうか