四番の仕事

四番の仕事って何だろうか。走者を還すこと。チームを勝利に導くこと。もちろん、どのチームの四番もこれらの仕事を期待されているだろうけど、何と言っても「相手投手の心を折る」ことが、四番の仕事としての究極だと思う。たとえばエースの決め球を打つというのもその一つ。とは言え、そこまでの仕事はなかなかできるものではない。なかなかそういう場面を目にすることもない。
ところが今日の第三試合、智弁和歌山の坂口君は見事にその仕事をやってのけた。1点を追う8回無死一、二塁。ベンチと三塁アルプスの全員が期待する中で、センターの一番深いところへライナーでたたき込む逆転3ラン。
7回まで強打の智弁打線を相手に2失点でしのいできた駒大岩見沢の板木投手だったが、続く五番・森本君にも安打され、六番高橋君の投前バントを野選、七番田甫君の投前バントを失策。八番岡田君には死球を与えてしまった。終盤とはいえ、まだ2点差である。緊張の糸が切れたというより、心がへし折られたように見えた。
折れた心は、甲子園に棲む魔物の大好物なのかも知れない。後続の投手も、火がついた智弁打線は止められず、この回11点。史上初のチーム1イニング3本塁打、1イニング2打席連続本塁打というおまけ付きである。
甲子園の魔物は確かに恐ろしいが、その魔物を呼び出してしまう四番はもっと恐ろしい。