199勝

山本マサがついに王手をかけた。あの変ちくりんなフォームからグニャグニャした球を投げる左腕が私は好きだ。そのくせ、140km/h出ないまっすぐで打者を押し込むあたりもまた素敵だ。今日の試合は外出先のテレビでわずか1分ほど見ただけだが、199の勝ち星を積み上げてこれた秘訣の一部を、その1分の間にかいま見ることができた。
それは5回表の第2打席。…えっ、投球じゃないのかって?そう、ここで三塁線に決めたバントは、得点にはつながらなかったものの、まさに絶妙の一言。
バントが上手いということは味方の得点力に貢献できるということであり、味方が点を取ってくれるということはチームが勝つということ、自分に白星がつくということにつながる。投手は5人目の内野手とよく言われるけれども、9人目の打者でもある以上、打席の端っこに立って三振しているだけではダメなのである。
それにしても上手いバントやったなぁ、と思って日本プロ野球機構のサイトで調べてみると、山本昌の通算犠打数は現役選手中15位の142個で、投手では1位である(年数を考えれば当たり前か)。現役12位で163個の的山捕手*1が歴代40位であることから見ても、歴代順位は相当上位であろうし、歴代40傑の中には投手が一人もいない*2ので、投手として歴代最多の犠打を決めている可能性も高い。
また、出場1試合当たりの犠打数を歴代40傑と現役20傑のうち重複を除いた48人で比較してみたところ、山本昌は0.266個で何と3位。1位は世界最多の533犠打を誇る川相昌弘の0.279個、2位は森監督の西武黄金時代に不動の2番として451犠打を記録した平野謙の0.268個。投手の1試合当たり打席数はレギュラー野手より少ないであろうこと、逆にバントのサインが出る確率は通常の野手より高いであろうことなど、単純に比較することはできないとしても、犠打でこの二人に比肩しうる数字というのは驚異的なことだと思う。
200勝まであと1勝。その試合、山本昌の犠打が決勝点につながったならば、野球の神様の粋な計らいだと思うことにする。

*1:兵庫県立福崎高校から新日鐵広畑、現ソフトバンク。通算打率はだいたい2割ちょうどと低いが、同じく新日鐵広畑出身捕手の定詰(.187)よりはマシ

*2:投手として1000試合出場したのは「金やん」こと金田正一のみであり、この表で1000試合未満の選手は現役野手の小関と東出なので、投手がいないのは明らか