トリプルスチール

プロでは18年ぶりとなる三重盗を、ヤクルトが阪神久保田を相手に決めてしまったらしい。三人の走者がそれぞれ盗塁をするということはつまり満塁からの盗塁であり、ホームスチールを含むということになる。普通ならまずそんなプレーを試みることはないので、18年ぶりというのもうなずけるが、通算では30回目になるらしい。「昔はそこそこ発生したけど、最近めっきり見なくなった」ということだろうか。日本プロ野球が精密になり、スキが減ったからとか、「この打者があの投手を打てるとは到底思えない、ええい一か八かじゃっ」というような状況が減ったというのが理由になるんだろうけど、こういうプレーもたまにはあったほうが見ていて楽しいような気がする。
ちなみに、塁間を駆け抜けるには俊足走者で3.7秒が必要。リードを加味すれば3.3秒くらいだろうか。プロの投手がクイックで投げれば、モーションを起こしてから捕手に球が到着するまで1.3秒、クイックでなくても2秒程度というから、普通に考えればホームスチールの成功する確率はゼロに近い。ホームスチールのほとんどは、スクイズのサインで突入したところ、ワンバウンドでバットに当たらず、捕手もそらした…という形だろう。
延長10回一死三塁、敬遠四球の二球目を無理矢理大ファウルにしてしまった鈍足強打の右打者を相手に、三塁走者に背を向けて投げる左投手がさらに大きく外した次の四球目…というような時になら、勝ち越しのホームスチールが決まるかも知れない。数ある野球マンガの劇的なプレーの中で、あれほどよく練られたシーンを、私は他に知らない。さすがあだち充である。