神様、仏様

とくれば稲尾さま。まぁ、バースさまと言われた時代もあるけれど、元祖は稲尾さま。その鉄腕・稲尾さんが亡くなったらしい。心よりご冥福をお祈りします。
生まれるはるか前の選手なので、そのすごさを生で体感することはできないんだけれど、数字を見れば唖然とさせられるほどすごい。2005年は藤川が80、今年は久保田が90と塗り替えてきた年間最多登板の日本記録、それまではこの稲尾の78登板が最多。でも前2者と稲尾を単純に比べて「久保田は稲尾よりすごい」などと言う人はたぶんいないはずだ。ちょっとこの年の稲尾の数字を出してみる。

選手名 登板 完投 完封 投球回 防御率
1961 稲尾和久 78 25 7 42 14 404 0/3 1.69
2005 藤川球児 80 0 0 7 1 92 1/3 1.36
2007 久保田智之 90 0 0 9 3 108 1.75

今後絶対に更新不可能と言われる年間42勝。更新不可能というよりも、更新させるような起用をしてはならないと言える年間404投球回。25完投も、今のローテで行けば年間通じてローテを守り、かつほぼ全試合完投というペース。3年連続30勝という史上唯一の記録もある。
忘れてはならないのが、1958年の日本シリーズ西鉄3連敗の後、稲尾4連投で4連勝」というやつ。でも稲尾は4連投じゃなくて、3戦目にも登板しているので5連投。さらには初戦も登板しているので6登板である。投げてないのは2戦目だけ。5戦目だけが救援登板で、残り5戦は先発、うち4戦(3, 4, 6, 7戦目)が完投西鉄の4勝3敗というシリーズだったが、そのうち稲尾が4勝2敗。今じゃ考えられない起用だ。
ピッチングマシーンの誕生をはじめとして、野球をとりまく様々なものが変化しているので、何十年も前の記録と今の記録の価値を比べることは難しい。でも、それぞれの時代における水準をはるかに上回ることは確かだし、それぞれの時代でファンを魅了してきたことも確か。すごい選手がいたんだな、と当時を思ってみるだけでもなかなかに楽しい。

      • -

あとは雑記。

  • プロ野球の記録は昔と今とで様変わりしているけど、高校野球はそれほどの印象がないな。完投重視、継投軽視の伝統がまだ生きているような気がする。チーム数が多くて選手が分散するから仕方ないのだろうか。
  • ちなみに年間完投数日本記録別所昭(のちに毅彦と改名)の47だけど、西武時代の松坂で15完投が最多。ミスター完投といわれた巨人の斎藤雅樹が21であり、そもそも先発登板数が30程度ということから考えてこれも更新不可能だろう。
  • 斎藤雅樹名球会入りできず駒田が名球会ってのも…ま、名球会なんてどうでもいいか。
  • 特定の投手に偏った起用、という意味では岡田采配は40年前の野球かもしれない。

11/13 18:00追記

  • 年間投球回の日本プロ野球記録は541回1/3らしい。戦時中の1942年、朝日の林安夫投手(しかも新人)。史上最多51先発登板。ちなみに、この年の朝日の試合数は105、イニング数は968回1/3なので、半分以上がこの林投手。