完全リレー

賛否両論あるだろうなぁ…。私は上述のとおり「とりと」にいて山井投手の投球を見ていないので何とも言えないが、岩瀬投手が3人で抑えたという結果に注目したい。日本一がかかっただけでなく、8回を完全に抑えた投手の後をうけての登板。いかな絶対的守護神であっても、心身の準備ができていなければこの場面でパーフェクトリリーフはできないだろう。「今まで感じたことのないプレッシャー」を感じつつ、期待通りの結果が出せるというのは素晴らしいことだと思う。
どっかのお偉い評論家さんがこの交代について激怒し、「小心で夢のない野球」などと言ったらしい。「夢」というのは非常に抽象的で、優勝することが夢という人も多いだろうし、小心などという批判に至っては全く的外れと言えるだろう。小心者なら、野球の怖さと周囲の批判におびえて何もできない。もちろん野球は怖いが、その怖さを知らなければ、それを打開する手は思いつかないし、周囲におびえていればその手を打てない。8回までパーフェクトに抑えた投手を交代させることの、なんと勇気の要ることか。もし打たれたときのことを考えてみよう。続投させて打たれたとしても、「8回まで完全の投手を代えられるわけがない」の一言で皆が納得するだろう。しかし代わって出てきた岩瀬投手が打たれたとしたら、いくら「岩瀬がうちの守護神だ」とか「1点差なら岩瀬と決めていた」と言ったところで批判が収まるはずもない。山井投手だって当然悔いが残るだろう。さらに、完全試合を手放し、守護神が打たれるという流れで敵地札幌ドームへ戻ったのでは、エース川上投手にも簡単な仕事ではなくなる。勝負事である以上、勝つために全てを尽くさねばならないのである。日ハム打線を目覚めさせないうちに終わらせること、大声援のある敵地には戻らせないこと。その重点を押さえるためにとられた岩瀬投手投入という策は、いつも通りでありながら極めて大胆。単なる思いつきではない、考え抜かれた采配だ。おそらく誰もが「落合監督らしい」と思ったのではないか。
日本シリーズ史上初の完全試合」も素晴らしいが、「継投による完全試合」だって史上初の記録であり、山井投手の名がこれからの歴史に埋もれてしまうことはないだろう。それにこうして我々野球ファンがいろいろ話のネタにしているのだから、十分な楽しみを与えてくれていると言っていい。公式記録だけが夢ではない。完全試合という投手1人の記録は残らなかったが、8回までを完璧に抑えた山井投手、勇気ある交代を指示した落合監督、最終回を締めくくった岩瀬投手の3人をはじめとする「中日ドラゴンズによる完全な試合」に賛辞を送らずにはいられない。