常磐線物語

私が常磐線〜メトロ千代田線に乗って通勤していることはすでに述べたところだが、ずっと08:21北柏発の10号車に乗っていると、誰がどこで乗ってきて、どこで誰が下りてということにも詳しくなってくる。
人間は外界を理解する時に言葉を媒体とする。しかし、固有名詞が分からない上、服装などは一定とは限らないことから、何らかのニックネームを持ってその個人を識別するほかないわけである。以下は、そのようにして名付けられた、私の通勤ライフを彩った人々についての紹介である。なお、住所や氏名を特定することにはつながりようがないので、個人情報保護法には抵触しないことを前もって明記しておく。

妖怪ケツ女
北柏で乗ってくる。ピンク系のどぎつい服装、どぎつい口紅と、同じくピンクのレスポ(Le Sportsac)のバッグを持って、7名定員のロングシートの7人目として無理矢理大きなケツを押し込む女性。かなり迷惑がられている。最近あまり見ない。
北柏の笛吹き男
別にネズミを街から追い出してくれるわけではない。いつも不審な動きをし、発車ブザーの声マネをしたり、車掌のホイッスルに合わせてポケットから笛を取り出し吹き鳴らしたりする。
ヴィトン姉ちゃん
どうやら学生らしい。我孫子より東から乗ってくる。おそらく学生で、柏から乗ってくる「美脚姉ちゃん」と友達同士。新松戸で下りるが、美脚姉ちゃんが乗ってくると席を立つことが多いので、北柏で座れなかった時の狙い目である。ただ、学生なので長期休暇の期間中は現れない。
キノクニヤおばさん
KINOKUNIYAと書かれたトートバッグが目印。柏で下りるので、座れなかった時の狙い目である。
ニセモリー
高校時代の恩師・森本先生に何となく似ているおじさん。柏で下りるが、他のサラリーマンが彼をマークしているのでつけいる隙がない。
化粧姉ちゃん
いつも熱心に化粧をしている姉ちゃん。おそらく学生、新松戸で下りる。一度、右目だけマスカラを塗った状態で下りていったが、大丈夫だったのだろうか。
化粧姉ちゃんの友達
空席が一つしかない時には化粧姉ちゃんが化粧するために座らせてあげている。新松戸で下りる。
ヒゲ&ヨメ
いつも仲良く手をつないだまま座っている。ヨメが松戸あたりで下りる。ヒゲはいつのまにか下りている。
マンガ大王
常人の1.5倍のサイズ。月曜はジャンプ、水曜はマガジンを読んでいる。新御茶ノ水まで下りない。
隣の係長
4月から9月までの、隣の係長。ツンとくる人ではないのであしからず。4月の多忙な時期は死んだように眠っていた。最近は9号車に乗っている。当然、私と同じ二重橋前で下りる。

このほかにもたくさんの人が乗ってきて、基本的に毎日満員である。私より後に乗ってくる人は、空席獲得の役に立たないのでここには書いていないが、特徴的な人はまだまだいる。顔は毎日見るんだけれども、素性は全く知らない人々。現代の都市に住む人の人間関係の一側面と言っていいのだろう。何だか妙な感じである。