押してダメなら引いてみな

という言葉は、皆さん聞いたことがあるだろう。それを念頭に置きつつ、以下の表を見てほしい。(○が勝ち、●が負け。背景が黒いと苦労します)

相手(番付) 勝負 決まり手
北勝力(前頭1) ひきおとし
旭天鵬(小結) あびせたおし
岩木山(前頭4) はたきこみ
垣添(前頭2) はたきこみ
出島(前頭3) おくりだし
雅山(前頭4) はたきこみ
普天王(前頭2) おしだし
白鵬(小結) おくりだし
玉乃島(前頭1) はたきこみ
稀勢の里(前頭5) おしだし
琴光喜(関脇) はたきこみ
安美錦(前頭6) つきおとし
魁皇大関 はたきこみ

13日目を終わって11勝2敗。星取だけを見ればかなり優秀なこの力士だが、問題は決まり手である。はたきこみが5回、おくりだしが2回、ひきおとしつきおとし、おしだしが各1回。真っ向から勝負して勝ったのは、押し出しのたったの1回だけである(おくりだしも、身をかわして背後に回る)。二日目のおくりだしは立ち合いで変化し、五日目のおくりだしは若干長い相撲だったが、その途中でやはり引き技を出している。
「いいじゃないか、引き技だって相撲の立派な技だ。見たところ、番付の比較的上位の相手ばかりだし、これだけ勝つだけで大したもんだ」そう言う人もいるかも知れないが、この星取り表が大関 千代大海のものだと聞いたらどんな顔をするだろう?見た目や四股名、そして大関という地位から、どちらかと言ったら力技、押しの相撲をしそうなイメージのある千代大海が実は引き技主体の相撲を取っているのである。
昨今大相撲の人気が衰えている。その理由は朝青龍が強すぎる、ライバルが不在であることだと言われているが、日本人最高位の大関がこんな相撲をしているのだから仕方あるまい。
1敗の首位・横綱朝青龍を追う立場のはずだが、大関が調子いい? 魁皇(9勝4敗)のことか?」とさえ言われてしまう千代大海。むろん、こんな手厳しいセリフを言うのは他でもない、師匠の九重親方(元横綱千代の富士)なのだが。