嫌煙家として

私はタバコが大嫌い。店で楽しく喋っていても、隣の席の人間がタバコを取り出したら店を出るくらい嫌い。
「タバコを吸ったら落ち着く」と言っている人がいるけれど、それは「吸わないと落ち着けない」体になってしまっているだけで、麻薬を打ったら落ち着くと言っているのと同じ。ただの薬物中毒だ。吸わなくても落ち着いていられる人はたくさんいるのだから、人間の体にはタバコは必要ではない。それどころか、ニコチンは「毒物及び劇物取締法」において指定されている毒物である。
そんな薬物中毒の連中のために、どうして健康体である我々が我慢を強いられなければならないのか?商売のために、お店は渋々喫煙席を用意せざるを得ないとしても、本当にタバコを吸わないと我慢できない人の割合よりもはるかに多くの喫煙席が用意され、タバコの煙が我慢できない&煙を必要としない人の割合よりもはるかに少ない禁煙席しか用意されないのはなぜか?そして多くの場合、その少ない禁煙席には喫煙席からの煙が流れ込んでくるのである。
そもそも分煙というのは、タバコを吸ってもいいエリアとタバコの煙のないエリアの双方を作り出すことに意味がある。タバコを吸っていい席と吸ってはいけない席を作ることは、分煙のための最低限の手段であり、それで十分となるものではない。禁煙席を希望する客は、(吸わないからどっちでもいいという人もいるにせよ)タバコの煙のない空間、つまり無煙席を求めているのである。
健康増進法において求められているのもそういった趣旨のものだが、実際に仕切りを設ける、エアカーテンを設置する等の処置は容易ではないだろう。であれば、席を3エリアに分け、「吸わないと我慢できないエリア」「吸わないけどあまり気にしないエリア」「我慢できないエリア」としてはどうだろう。喫煙所のもやの中に飛び込む人々なのだから、喫煙者同士は部屋の入口から遠い端に固めて、煙が部屋中に広がらないようにしてもかまわないだろう。
そもそも、食事は味覚だけで味わうものではなく、視覚、嗅覚、歯ごたえや舌触りという触覚、調理する&噛みしめるときの音という聴覚の五感全てで楽しむものだろう。特に嗅覚は味覚と関連が深く、においがなければタマネギとリンゴの区別も困難だという。自らの料理を充分に楽しんでほしいと願う料理人なら、他の客の嗅覚を妨げるタバコの煙など許せないはずではないのかと思うのだが、なぜ全席禁煙の店はなかなか増えないのだろうか。