〜ても

YOU-1くんとこで話題になった、某K阪電車のアナウンス。

電車が到着いたしましても、車内整理のため一旦扉を閉めます。ご乗車にならずに、しばらくそのままの位置でお待ち下さい。

この「ても」の位置がおかしい、という話。確かに、100%許容される文ではないかも知れない。では「到着しても乗れません」という文はどうか?これについて違和感を抱く人はいないだろう。「ても」が使われる典型例はAてもBではないという形で、Aという条件が成立した場合に普通に期待されるBという現象が成り立たない場合に使われる(逆条件)。今回の例文では、「ても」以降の部分は否定文ではないから、違和感を抱く人がいるのだろう。
しかし、「一旦扉を閉める」という文は、意味的には「乗れない」ということであるし、電車はホームに到着すればドアを開けて乗車を待つのが普通だ。つまりその期待が裏切られる「一旦扉を閉める」は、「ても」の後を受けるにあたって不適格ではないと思う。
いやー、でも不自然だよ、という人がいることは否定しない。でも、「ても」の後は否定文という形式をとらなくても構わないということがもう少しわかりやすい例文を思いついたので下に書いてみる。

彼が到着しても、状況は一緒です。

これだとどうだろう。「状況は変わりません」とした方がよりしっくりくるかもしれないけれど、十分に許容される文だと思われる*1
日本語に限らずどんな言語でも、その言語のネイティブに100%許容される文と全く許容されない文にきっちり分かれるわけではない。だから、私が特に違和感を覚えない冒頭の文に、他の人が違和感を覚えることは全然あり得る(苦笑)ことなのである。

*1:ちなみに、「彼が到着しても、状況は変わる」という文も成り立つが、この場合は逆条件ではなく、「彼女が到着しても」「猫が到着しても」等が裏に隠れている。つまり条件の並列となる