播州弁講座〜敬語て何どい
関西の方言は全般的に敬語表現が貧弱である。尊敬・謙譲・丁寧なんてコムズカシイことは言わない。「え?京都弁て「○○しはる」言うやん。あれ尊敬語ちゃうのん?」私も最初はそうやろなと思てたんですけど、カテキョの生徒がこんな事言いよったんですわ。
「あ、犬が歩いたはる〜」
どこが尊敬語やねんと。「〜はる」は他者の動作なら何でも使えるということで、そこに敬意の有無は関係がないらしい。そして、我が母語たる播州弁が誇る敬語表現とは、「○○したった」である。目上の動作にのみ用いるので、尊敬語と考えられる。*1ところがこれは「○○してはった」がつづまったという成り立ちからも分かるとおり、過去および完了しか表せないのだ。現在のことを表す場合、表現は「○○しとってや」となる。「○○しておいでだ」という感じだろうか。例文を以下に挙げる。なお、訳として「〜しておられる」等をあてているが、敬意のレベルはこれより遙かに低いと思われる。
- おとつい、おっちゃん来たったで。(一昨日、おじさんが来られたよ。)
- おい、もうセンセ来とってやで。早よ来いや。(おい、もう先生は来られているよ。早く来いよ。)
- そない言うたら、あん時もう来とったったなぁ。(そう言えば、あの時もう来ておられたなぁ。)
tのキーを何度押したか分からないが、極めつけの例文を紹介しよう。
- 先輩、パンキョー何取っとったったんすか?
これぞ播州弁におけるチャウチャウちゃうんちゃう?と言ってもいいだろう。
*1:なお、「(目上の人が)来たった」と、「(お前のために)来たった(=来てやった、来てあげた)」とはイントネーションが違い、混同することはない