数字は正確に

女性研究者の数が10万人を突破し、研究者全体に占める割合が12%になったが、米国の約30%、英仏の約25%に比べるとまだ低いのだそうだ。
何かの調査結果で見たことがあるが、助手、助教授、教授とポストが上がるにしたがって女性の割合が低くなるのだという。具体的な数字は忘れてしまったが、その数字だけをもって「学界においてはいまだ男性が女性を押さえつけている」とするのは早計だ。
ポストが上がるにしたがって平均年齢が上がる。平均年齢が高い層における問題は、過去の日本の状況により生み出されたものであると考えることができる。たとえば教授の平均年齢が52歳、女性教授の割合が1%だとしよう。人口比で言えば約50%であるべきだから、この数字だけを見ればきわめて不平等である。しかしその前に、約30年前に大学を卒業して研究者を志した人々の男女比や、現在52歳で研究職にある人の男女比を調べる必要があろう。これらの調査において女性の割合が5%、10%といった数字が出れば、たしかに女性研究者はポスト競争で不利益をこうむっている。しかしもし0.5%という数字が出たら、むしろ現在において女性は優遇されていると見ることもできるはずだ。30年前からすれば、研究職を志す女性は年々増えている。若くなればなるほど女性の割合が増すのだから、低いポストになればなるほど女性の割合が増すのも当然のことなのだ。学界において年功序列が根強く残っていること--これ自体問題ではあるのだが--を考慮に入れた調査をせねば、学界において女性研究者がどれくらいの不利益をこうむっているかを精密に拾い出すことはできない。
女性が研究者を志すこと自体に対して否定的だという文化的な問題も含め、欧米諸国に比べて数十年遅れているのだろう。しかしその遅れを取り戻そうとするあまり、性急な数値目標を立ててはいけない。見かけの数字を整えることではなく、選考・登用の過程を透明化することが、この問題における平等の意味だろう。