同じwadaとして、文部科学省関係者として

うーん、あれはどう見ても盗作でしょう。むしろ私がやったのであれば、似ても似つかぬ絵に仕上がってバレなかったかも知れないが(笑)
文部科学省文化庁)が迅速に賞を取り消したことに対してはスギ氏から「敬意を表する」とコメントを頂いているが、一方で授賞した責任について問う声もある。しかし、しかしだね。絵画界のえらい人を何人も集めて(もちろん謝金を払って)委員会を結成し、推薦を受けて審議しているわけだけれども、その人たちがスギ氏を知らなければ見抜けようはずもない。まして単なる公務員である文化庁職員にそれを見抜けと言うのは無理ってもんで、「芸術」と一言に言っても絵画、彫刻、書道、音楽、演劇…さらに絵画も洋画・日本画、水彩・油彩・版画・水墨画…と非常に多岐にわたる。世の中に画家は山ほどいて、作品は星の数ほどあるわけだ。それらの作品について全て網羅した画集などないし、一人の人間が集積しうる情報量には限界がある。現状の仕組みでは今回のような事態を防ぎきることは不可能と言っていい。だからといって何も対策を講じなくていいかというと、もちろんそんなことはない。再発防止策を講じねば、賞の権威も省の権威も失墜するというものだろう。
そういえば井上雄彦の「スラムダンク」のコマをまるっぽトレースして自分のキャラの顔をあて、連載中止→廃刊に追い込まれた漫画家がいた。あれは対象が何万部も発行される出版物であり(スラムダンクは合計1億冊を突破した)、何万人もの目に触れ、莫大な情報が世の中に溢れたから明るみに出たのである。芸術選奨の選考段階でも、候補者の作品を一定期間文化庁のホームページにおいて公開し、情報を集めてみるというのはどうだろう。人気投票を行うわけではなく、あくまで不正な作品・不正な作者が受賞することを防ぐ目的であれば、賞の格が下がる心配もあるまい。
two heads are better than one、三人寄れば文殊の知恵…同じようなことわざはいろいろな国にあるが、情報の保有主体である人間の数が多ければ多いほど、情報の総量も増してゆくのである。文部科学省は知識や教養を担当する省庁なのであるから、限りない知識の集合体となりうるwebを上手に活用するお手本となってもらいたいものである。