リスニングテストについてもう一丁

今また猛烈にむかつく記事を見たのでひと言。河北新報の記事から抜粋すると以下のような感じ。

大学入試センター試験で初めて実施され、トラブルが続出した英語・リスニングで使用されたICプレーヤーの費用は、受験生が負担する形になっていたことが分かった。プレーヤーは自由に持ち帰れるが、検定料も前年度より2000円アップ。受験生の経済的負担が増すと同時に不公平感も拡大した現行方式に、批判は一層高まりそうだ。(中略)
大半の受験生は持ち帰ったが、「ほかに使い道はない。自己採点したら捨てる」と仙台市青葉区の女子高生(18)。青葉区の女子予備校生(19)も「おもちゃみたいで…。いらない」と切り捨てた。(中略)
仙台市内の大手家電販売店も「センター試験プレーヤーの原価は3000円程度ではないか」とみる。(中略)
長女が来年、大学を受験する宮城野区の主婦(45)は「ただの無駄遣いに思える。センターの関係者はもっと真剣に考えてほしい」と話している。

まず一つ。試験にかかるコストを受験者が負担するのは当然センター試験は国の義務的なサービスではない。原料として紙とインクとホッチキスの針しか使ってないテスト自体に15000円支払うことに文句をつけず、もっとコストがかかっているプレイヤーに2000円払うことに文句をつけるその神経はまったく理解できない。じゃあ税金で負担すればいいのか?受益者負担の原則に反するではないか。企業や私学、国公立大学とさえ違って、大学入試センターの収入源は税金と受験料しかないのである。
さらに言わせてもらうと、「センター利用の私学入試」など受験料を取るに値しない方式だ。入試センターからデータを提供してもらって合否判定にかけるだけのテストにいくら払っているか、入試センターからのデータ提供手数料にいくら上乗せされているか、考えたことがあるのだろうか?
二つめ。0.1%以下の割合をトラブルが続出と表現するのはおかしい…というのは前にも書いたか。工業製品としてトップクラスとされるトヨタ車でも数十万台規模のリコールが出ているじゃないか。Windowsなんて全てのマシンが今もって不具合だぞ。
三つめ。「不公平感」とは上記トラブルのことを指すのだろうか。今まで文字や図という視覚情報だけで(健常者の場合)行ってきたものに、「音」という聴覚情報を追加する以上、周囲の騒音などの影響が増すのは当然。しかし、言語能力というものがなによりも音声、つまり聞き取りと喋りを基本とするものであること、そして受験英語にも実用性を持たせようという目的があることを考えると、これはやむを得ない。そしてその周囲の騒音や各施設の音響設備による影響を極力減らすためにICプレイヤーを導入したという経緯を無視してほしくない。もちろん、そのICプレイヤーには100%正常に稼働することが期待されるわけだが、代替案として思いつく限りでは、この方式による不具合が特に高いとは思えない(1/22の記事参照)。
四つめ。テスト問題に再利用価値がないのは当然。問題用紙は記念に持って帰って家に置いておくんじゃないのか?
五つめ。「おもちゃみたい」なのはコスト削減の結果である。デザインに凝ったり、あとで喜んで使えるようにするためにはいったいどれだけのコストがかかるか、1秒でも考えれば分かるだろうに。主とする目的に特化したものを作っていったい何が悪いんだろうか。私学の入試に使うのであれば、学校のマークを入れたりSDカードが使えるようにするかもしれないが、それはあくまでも広告目的。生徒集めのためのノベルティとしてである。大学入試センターがそんなことをする意味は全くないし、そこでかかったコストをあとで回収する手段を受験料の値上げか税金での補填以外に持たないのだから、やりたくてもできないのである。
この記事に書いてある部分だけでもこれだけ矛盾だらけの、意味のない批判である。新聞社として公の立場で文章を書くのであればもうすこしまともに考えてからにして頂きたい。いや、あえてこう表現しようか。ただの字数稼ぎに思える。新聞社の関係者はもっと真剣に考えてほしい